ホテルニューアカオができるまで
1973年(昭和48年)の開業以来、熱海のシンボルとして親しまれてきた高級リゾートホテル『ホテルニューアカオ』。新型コロナウイルス感染症の流行などの影響を受け、多くの人々に惜しまれつつ歴史に幕を下ろそうとしていたこのホテルに新たな息吹をもたらしたのがマイステイズ・ホテル・マネジメントの『ホテルニューアカオ 再建プロジェクト』です。過去から未来へ、リノベーションで想いを紡ぐ――。そんな挑戦がスタートを切りました。
-
小櫃さん
ビジネスディベロップメント(開発) シニアスタッフ
2019年新卒入社。ホテルスタッフとしてスタートを切り、入社2年目に社内公募をきっかけにホテル開発プロジェクトなどを手掛けるビジネスディベロップメント部門にキャリアチェンジ。
-
土橋さん
ホテルニューアカオ 総支配人
2016年入社。北海道・大阪にてホテル総支配人を歴任後、2022年12月、『ホテルニューアカオ』総支配人に着任。再建プロジェクトの中心人物として、プロジェクトをリード。現在も同ホテルの運営に携わっている。
-
徳永さん
フード&ビバレッジディベロップメント チームマネージャー
2014年入社。飲食業界で長年の経験を重ね、現在は当社のフード&ビバレッジディベロップメント部門のチームリーダーとして、レストランやカフェなどを中心とした料飲施設の開発などに携わっている。
旧『ホテルニューアカオ』の営業終了が発表されたのは、2021年11月16日のこと。マイステイズ・ホテル・マネジメントによる同ホテルの再建プロジェクトがスタートしたのは、約1年後の2022年12月のことでした。
2022年11月『ホテルニューアカオ』の事業譲渡が発表されました。譲渡先の投資ファンドのパートナーとして再建プロジェクトを手掛けることになったのが、私たちマイステイズ・ホテル・マネジメントでした。
ですが実は、この事業譲渡を実現するまでの間にも、当社のスタッフたちは水面下で様々な活躍を繰り広げていました。その一人が、ビジネスディベロップメント部門に所属する小櫃さんです。
「当部門のミッションは、ホテル開発プロジェクトを推進していくこと。事業譲渡の検討段階から市場調査などに着手し、事業譲渡が正式に決定したら現地に入って、プロジェクトの全体統括を担うことになります。いわば現場監督のようなイメージですね」(小櫃)
熱海のホテルやレジャー施設の状況などを調査し、熱海という観光地やホテルニューアカオというホテルの可能性を探る。事業譲渡後の運用についてもシミュレーションし、事業譲渡に向けた判断材料を揃えていく…。そういった地道な活動の積み重ねが、事業譲渡へとつながっていきました。
事業譲渡の正式発表とともに、本格スタートを切った再建プロジェクト。総支配人をはじめとするプロフェッショナルたちが集まり『開業準備室』が立ち上がりました。
事業譲渡が正式に決定すると、さらなるプロフェッショナルたちが招集されることになりました。最初に白羽の矢が立ったのは、総支配人となる土橋さんでした。様々なホテルの支配人として活躍し、リノベーションホテルの立ち上げ案件などにも携わってきた人材です。「自分なりに様々な経験を重ねてきたとはいえ、『ホテルニューアカオ』は、私のキャリアの中でもトップクラスの規模となる大規模リゾートホテルです。お話をいただいた時には、率直に驚き、自分に務まるだろうかという不安もよぎりました」(土橋)。東京本社で内示を受けた土橋さんは、その足で熱海へ。「首都圏から40分で、お客様の母数が大きい熱海エリア。その『顔』ともいえるランドマークスポットを運営する…。こんな大仕事に取り組めるのだと、俄然モチベーションが湧いてきましたね」(土橋)。正式にニューアカオの総支配人に着任した土橋さんは、館内の一角に『開業準備室』を開設。プロジェクトが急ピッチで動き始めました。
ホテルを「生まれ変わらせる」ということは、「何もかもすべてを新しくする」ことではありません。50年の歴史を持つ『ホテルニューアカオ』には、人々の50年間の思いが込められている。――コンセプトは『昭和レトロ』に決定しました。
『ホテルニューアカオ』は、海洋上に佇む『オーシャン・ウイング』と、断崖絶壁の頂上にそびえる『ホライゾン・ウイング』で構成されています。再建プロジェクトにおいては、比較的新しい『ホライゾン・ウイング』を2022年12月に先行オープンし、海風の影響を強く受けていた『オーシャン・ウイング』は翌2023年7月のグランドオープンを目指して、ホテル全体を生まれ変わらせることとなりました。「『オーシャン・ウイング』は最上階である17階にフロントがあり、崖下へと伸びていくという斬新なつくりの建物です。老朽化した建物や内装の補修を行い、客室数などのフロア構成や、レストランのコンセプトなども一から見直していくことになったのです」(土橋)大切なのは、50年の歴史を持つ『ホテルニューアカオ』の良さを受け継ぎ、次代へとつないでいくこと。長年にわたりこのホテルを愛してくださってきたお客様たちにも、初めて訪れるお客様たちにも喜んでいただけるホテルをつくりあげていくために、『昭和レトロ』をコンセプトとした新たなホテルづくりがスタートしたのです。
『ビジネスディベロップメント』といえば、スマートでカッコいい仕事をイメージするかもしれません。ですがこの時期、同部門のメンバーは、なんとジャージ姿でホテル中を駆け回っていました。
この頃、ビジネスディベロップメント部門の小櫃さんは、ほぼ毎日ジャージ姿で館内中を駆け回っていました。「ホテルの運営というのは、多くの取引業者さんたちのご協力があってこそ成り立つもの。細かいところでは、備品や什器、食材、アメニティなどを、どんな業者さんから購入orリースしているのか、契約内容はどうなっているのかなどを洗い出すのも、私のミッションのひとつでした」(小櫃)とはいえ、50年の歴史を持つホテルなだけに、中には信頼関係のみを頼りに取引が行われ続けてきたケースもあり、契約書ひとつ探し出すだけでも一苦労。「館内の倉庫という倉庫に潜り込んで、片っ端から資料を精査していきました(笑)。全室に引かれている電話回線などについても、一回線ごとに電話をかけて『この番号はどの部屋につながっているのか」を確認していきました」(小櫃)100以上の取引業者さんとの取引内容を精査し、見直すべき点は見直し、改めてご契約を締結する。小櫃さんの活躍により、徐々にホテル運営の土台が固まっていきました。
様々な領域のプロフェッショナルたちが在籍する当社。リゾートホテルならではの『食』をプロデュースするために、フード&ビバレッジディベロップメント部門のチームリーダーに白羽の矢が立ちました。
リゾートホテルの魅力のひとつとなる『食』の領域を任されたのが、フード&ビバレッジディベロップメント部門のチームマネージャーである徳永さんでした。のちに『オーシャン・ウイング』を代表することになる2つの飲食スポットが、彼のリードにより実現したのです。
「ひとつは『メインダイニング錦』です。席数400の巨大レストランで、以前はコース料理をご提供していたのですが、ここをビュッフェレストランに生まれ変わらせることにしたのです」(徳永)
ディナーショーのステージとして使用されていたスペースを一部客席に造り替えるといった大胆なリニューアルを行いつつ、長年使用されてきた格調の高い椅子やテーブルなどは入れ替えるのではなく修繕を施す。往年の雰囲気を保持しながら、新たな料飲スペースを具現化していきました。
「もうひとつは『缶詰BAR 缶蔵~KANZO~』です。高級ホテルで缶詰バーというのは斬新すぎるかとも思いましたが、だからこそ面白いのではないかと、東京をはじめとする各地の缶詰バーを視察し、仕入れ先なども一つひとつ吟味していきました」(徳永)
マイステイズ・ホテル・マネジメントのプロフェッショナルたちの手により再建への土台固めが着々と進む中、旧『ホテルニューアカオ』を愛し、同ホテルを支え続けてきたプロフェッショナルたちも新たな第一歩を踏み出していました。2つの価値観の出会いは、さらなるシナジーを生み出していったのです。